沖縄県の社会保険労務士、行政書士松本です。
「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金」のリーフレットが公表されました。
今回はそのリーフレットの内容を社会保険労務士の視点で読み解いていきます。
助成金の活用を検討している企業は必見です。
小学校等臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援について
新型コロナウイルスによる小学校等の臨時休業の問題。
頭を抱えている保護者や会社は多いと思います。
休校した小学校等に通う子どもの保護者が休職したことに伴う所得減少に対応するため、正規非正規を問わず、労働基準法の年次有給休暇とは別に有給休暇を取得させた企業に対して活用が期待できる助成金の創設が公表されました。
「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設します」
(厚生労働省HP)
※上記は概要版でしたが、下記に詳細版のリーフレットのリンクを貼っておきます。
新型コロナウイルス感染症学校休業等助成金リーフレット(詳細版)
小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金の内容について
概要
概要は以下の通りです。
・小学校等の臨時休業により保護者が休職した
・正規、非正規雇用の方対象
・労働基準法の年次有給休暇とは別に、有給の休暇を取得させる
リーフレットより引用
ちなみに、「小学校等」とは、「小学校、義務教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等」をいいます。
中学校、高校は含まれていません。
ただし特別支援学校は高校まで対象となっています。
特別支援学校はケアが必要な子どもたちが通っているので、年齢が高くても保護者の対応が必要と言う判断でしょう。
特例の対象となる企業
特例の対象となる企業は、以下の通り。
「臨時休業した小学校等に通う子の保護者の方々に対して、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた企業」
リーフレットより引用
ここでは次の点に注意が必要です。
※有給の休暇は、労働基準法に定める年次有給休暇とは別である必要があります。
リーフレットより引用
そうなんです。
通常会社で取得する年次有給休暇で処理すると対象外です。
私が注目したのは次の一文。
※ 就業規則の改定による新たな休暇制度の導入を必ずしも求めるものではありません。
リーフレットより引用
この助成金の話が最初にでたときは、「就業規則の改定が必要になるな」と思いましたが、厚生労働省必ずしもそこまでは求めていないということです。
就業規則の変更手続きでは、労働者代表の意見を聞いたりと、一定の手続きが必要になるのですが、今回改定が必要ないということであれば、スピーディーに対応できると思います。
ただし、就業規則の改定は必要なくても、特例休暇を取得した労働者の出勤簿(タイムカード)や賃金台帳の提出は求められる可能性があると思うので、労務管理が十分にできていない会社はそろえるべき帳簿をきちんと整えておくことが必要です。
どのような書類や証明書類が必要になるかは、今後の厚生労働省より発表されます。
<参考>
助成の内容
助成の内容は、以下の通り。
令和2年2月27日から3月31日において、有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額
*1日1人当たり8,330円を助成の上限とします。
*大企業、中小企業ともに同様です。
リーフレットより引用
そして、 次の一文がちょっと「?」と思いました。
*風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれがある小学校等に通う子の保護者に対する有給の休暇に関しても、対象となります。
リーフレットより引用
どこに読点をつけたらいいのか悩みましたが、私は
「風症状など新型コロナウィルに感染した恐れがある」「小学校等に通う子」の保護者に対して、だと理解しました。
おそらく休業していない学校へ通学する子どもが、発熱症状が出たときのことを想定しているのでしょう。
有給の看護休暇のイメージに近いですね。
時給制の場合どうなるのか
時給制の社員の年次有給休暇はどうなるでしょうか。
その日のシフトが3時間の時給制の社員が8時間子どもの世話をした場合、補償されるのは3時間?8時間?
通常労働基準法では、年次有給休暇を取得した時の賃金の計算として、
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる賃金
- 健康保険の標準報酬月額相当額
をもとに計算します。
1の「平均賃金」はその都度計算する必要があります。
3の「健康保険の標準報酬月額相当額」は労使協定を締結する必要があります。
そのため、多くの企業では2の
「所定労働時間労働した場合に支払われる賃金」
で年休取得時の賃金の計算を処理していると思います。
この場合の年次有給休暇の考え方だと、時給制の方が4時間のシフトで働く日に年次有給休暇を取得した場合、4時間分の賃金が支払われているはずです。
(そもそもパートで有給を使ったことが無い・・・という場合もあるかもしれませんがパート社員にも法定の基準を満たせば有給は発生します)
リーフレットの、
「賃金全額支給」
「上限8,330円」
というのがどこまで所得をカバーする話なのかは、詳細が明らかになってみないとわかりません。
通常の考え方だと、シフトの時間分です。
今後の厚生労働省の発表に注目
この「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金」の申請受付はまだ始まっていません。
申請期間や手続が決まり次第、早急に周知されるということなので、当ブログでもウォッチしていきたいと思います。
制度の詳しい支給要件や申請書類等についても、詳細が固まり次第、厚生労働省HPや都道府県労働局からアナウンスされるということです。
最後に一点だけ。厚生労働省からのアナウンスです。
助成金の勧誘にご注意ください!
申請や、申請のための相談を受け付けるといった記載の書面を一方的に送付(FAX)するまたは電話により執拗に勧誘する業者の情報が寄せられています。
こうした勧誘の中には、厚生労働省や都道府県労働局・ハローワークが関与していることを示唆する内容が含まれている場合がありますが、厚生労働省や労働局・ハローワークでは、このような勧誘に関与している事実はありませんので、十分にご注意ください。
この他、「100%助成金が受けられます。」等により勧誘を行う業者の情報も寄せられていますが、支給要件を満たしていないと判断された場合、受給できませんのでご注意ください。
リーフレットより引用
助成金はビジネスではありません。
助成金の申請には日ごろの労務管理を適正におこなうことが必要です。
助成金制度は「会社の労務管理をまっとうにしよう」という企業にぜひ利用していただきたい制度だと思います。
今後も続く働き方改革の推進、助成金の申請代行を専門におこなうことができる「社会保険労務士」の資格に、今注目が集まっています。
私は通信教育を利用して働きながら社会保険労務士の勉強をし、合格することができました。
時代に左右されない独立開業できる資格として、社会保険労務士はおすすめです。
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