
沖縄県の社会保険労務士、行政書士松本です。
猛威を振るう新型コロナウィルス。
小中高校の一斉休校も始まりました。
特に低学年のお子さんを抱える家庭にとっては、預け先も見つからず休業を余儀なくされる場合もでてきていますね。
そんななか厚生労働省は学校休業に伴う保護者の負担軽減策として、緊急実施する助成金の概要を発表しました。
助成金の概要について説明します。
※3月10日詳細版がでました。以下の記事に書いています。
新型コロナ給料保障助成金の概要が判明

助成金の概要
報道の概要は以下の通りです。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための臨時休校が2日から全国で始まったのに伴い、厚生労働省は、仕事を休んだ従業員に給料を全額支払った企業を対象に、1人当たり日額上限8330円の助成金を出す新たな制度の概要を発表した。<中略> 企業が助成金を受け取るには、従業員に通常の有給休暇とは別に有給休暇を認め、その休み中の給料の全額を支払うことが条件だ。助成金の上限額は、失業時に雇用保険から出す基本手当の日額上限の最高額(8330円)を踏まえた。企業が受け取る助成金よりも従業員に支払う給料が多い場合、差額は企業の負担になる。
2020年3月2日朝日新聞デジタルより引用
まず気になる点から検討していきます。
給料を全額支払った企業が対象
今日時点の報道では、「給料を全額支払った企業」が対象となっていますね。
ということは、普通に年次有給休暇と同じ考えであることがベースでしょう。
9時始業で18時終業の一日8時間の職場の人なら、1日休んだら8時間分の賃金を支払った企業が対象ということですね。
ここで気になるのは、「午前中は見る人がいないから午前中だけ休んだ」という場合が対象になるのかどうか。
こういう状況ですから、一日半日問わず休んだ分の給料は払ってもらえると助かりますが、対象となるかどうかは確認することが必要でしょう。
1人当たり日額上限8330円の助成金を出す
先日休校に伴う助成金の話が出たときは、一日の給料の3分の2くらいは保障されるのではないかという報道もありましたが、一日の上限額が8330円というところに落ち着きました。
失業時に雇用保険から出す基本手当の日額上限の最高額(8330円)を踏まえたようです。
しかも、企業が受け取る助成金よりも従業員に支払う給料が多い場合、差額は企業の負担になります。
「8330円だけ払えばいい」というわけではありませんので気を付けてください。
逆に「8330円しか出せないよ」というのも「全額」にはなりません。
この8330円は一日8時間働く人の時給にして、1時間約1041円。
東京都の最低賃金が2020年2月現在で1013円なので、最低賃金も意識したのでしょう。
ただ、助成金は雇用保険料をもとに支給されるものなので、賃金助成の対象者が「雇用保険に加入している人」になるはずです。
そうすると週の労働時間が20時間以上の人が対象なります。
週の労働時間が20時間に満たない人、たとえば、一日6時間の週3日の人ととかは週18時間なので雇用保険には加入していないでしょう。
この辺の方々には一般財源から対応すると日経新聞では報じられいました。
労働時間が週20時間未満の短時間労働者は雇用保険に入っていないが、こうしたパート労働者向けの補償は一般会計で賄う。
2020年3月2日日経新聞電子版より引用
「正規、非正規を問わず」ということなので、このような特例措置となっていると思います。
通常の有給休暇とは別に有給休暇を認めること

特別休暇での取り扱い
ここが結構肝になってくるのかなと思っています。
通常の有給ではなく、別の有給として与えなければならないということです。
これすなわち「特別休暇」を作りなさい。
ということですよね。
「特別休暇」で多いのは結婚休暇や忌引き休暇がイメージできるのではないでしょうか。
企業は従業員をただ休ませるのではなくて、「特別休暇」として休ませなければならないのです。
そのため、日数の上限が有給と別カウントになるので、日数の上限があるのかないのかはっきりしません。
一般的に結婚休暇などは「結婚式もしくは入籍の日から5日間」などど上限が決まっています。
今回の助成金対象の休暇に上限があるのか確認が必要です。
感染した恐れでの看病も助成対象
朝日新聞デジタルでの報道は以下の通り。
政府が休校を要請した学校のうち小学校と特別支援学校(高校まで)に加え、幼稚園、保育所、学童保育、認定こども園などの臨時休業によって、子どもの世話で休んだ従業員のいる企業が助成の対象だ。子どもが新型コロナウイルスに感染した恐れがあって仕事を休んだ場合も助成金を出す。子どもが中高生以上の場合は対象外だ。
2020年3月2日朝日新聞デジタルより引用
多くの企業では子の看護休暇の制度があるはずです(育児・介護休業制度)
ただし、子の看護休暇は必ずしも有給ではありません。
その会社の就業規則で有給か無給なのかの定めによります。
しかし、今回の緊急対応助成金では、子どもが新型コロナウィルスに感染した恐れがあって仕事を休んだ場合も対象になるといいます。
「新型コロナウィルスに感染した恐れ」の定義が、ただの37.5℃以上の発熱なのか、そして中高生が疑いのある症状が出たら休めないので一人で家においておけるのか、というさまざまな心配はつついてまわります。
また、もし子どもが新型コロナウィルスに感染した疑いがあって、しかし症状が軽くすぐに回復などした場合、企業が「陰性証明書」を従業員に求めたくなるかもしれません。
しかし医療期間では「陰性証明書」なるものは発行していません。
保健所でも発行していません。
風邪で休んだら上司に「陰性証明書」を求められた 新型コロナで相談、県が注意喚起
(沖縄タイムス)
従業員としては「子どもが新型コロナウィルスに感染したかもしれない」という心配がありますし、それを聞いた企業としては「感染が疑われるなら治っても2週間は出勤しないでほしい」という指示をだしたくなるでしょう。
「感染の疑い」の休業がどういう状態での看病を指すのか。
曖昧のままでは別の問題を引き起こしてしまいます。
休校していなくても認められる場合も
地域の判断で休校しなかった小学校に通う子どもでも、風邪の症状が出て新型コロナに感染した恐れがあり、看病が必要になった保護者の賃金は補償される場合があります。
(2020年3月3日日経新聞電子版参照)
ただ上記でも述べましたが、どのレベルを持って新型コロナウィルスに感染した恐れがあるのかが明確でないと、企業の対応は大変難しいと思います。
また感染者が出ていない地域の会社は危機意識がまた異なるでしょうから、会社で対象となる従業員(子どもが感染の恐れありで看病)が一人で、受給できる助成金の額が過少なら「煩わしいから申請しない」という 会社もでてくると思います。
対象期間が決まっている
助成金の対象となる休業の日の期間は、 一斉休校を要請した
2月27日から3月31日までに取った休み
が対象となります。
対象はあくまで「給料」をもらっている人

自営業は対象外
今回の助成金はあくまで「給料もらっている人」が対象です。
つまり自営業やフリーランス、業務請負、業務委託のケースでは助成対象とはなりません。
八百屋さんなどの個人事業主も対象外です。
政府は多様な働き方推進の一環でフリーランスの待遇向上にも取り組んでいましたが、今回は対象外でした。
何をもっていして、「一日の賃金額」にするのかというのを決めるのも難しいところであります。
この辺はまた物議をかもしそうです。
ただ自営業の方は売り上げ減少で融資などの活用が見込めるかもしれません。
新型コロナウイルスに関する経営相談窓口で土日も相談を受け付けます(経済産業省)
賃金助成以外の補助政策

ベビーシッター代も補助の対象
そのほか賃金助成以外の補助政策としてベビーシッター代の補助があります。
小学校の休校に伴って子育てと仕事の両立を支えるサービスの需要が増えると見込まれている。内閣府は働くためにベビーシッターを利用する際の助成制度を増額する。通常は1世帯あたり1か月で5万2800円を補助しているが、これを3月に限り、最大で26万4千円に上げる。
2020年3月2日日経新聞電子版より引用
企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における「ベビーシッター派遣事業」の令和元年度の取扱いについて(内閣府)
預け先がないなら逆に家で預かってもらうという逆転の発想もありかもしれませんね。
まずは情報をしっかりと確認しよう

沖縄労働局には「助成金センター」が設置されています。
全国の都道府県の労働局にも助成金に関する窓口が設置されています。
まだ概要しかわからないので、まずは担当窓口で詳細について、確認しましょう。
(今週中には厚生労働省から詳細なプレスリリースがでるかもしれません)
助成金は「要件に該当した場合」助成する制度です。
まずは要件を確認して該当するかどうか検討することが先決ですね。
最後に。
助成金の申請には日ごろの労務管理を適正におこなうことが必要です。
今後も続く働き方改革の推進、助成金の申請代行を専門におこなうことができる「社会保険労務士」の資格に、今注目が集まっています。
私は通信教育を利用して働きながら社会保険労務士の勉強をし、合格することができました。
時代に左右されない独立開業できる資格として、社会保険労務士はおすすめです。
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