沖縄県浦添市の特定社会保険労務士・特定行政書士・1級FP松本@officegsrです。
2022年度(令和4年度)も目前。
毎年社会保険や労働保険、労務関係のさまざまな法令が改正施行されます。
せっかく勉強したのにまた法律がかわる・・・なんてところが社労士試験の難しいところですが。
今回企業が注目すべき2022年度(令和4年度)から改正される主な社会保険・労務関係の法改正を紹介します。
企業の人事労務の担当者は必見です。
(この記事は2022年3月現在の法令に基づいて記載しています)
2022年度(令和4年度)の社会保険・労務関係の法改正
中小企業のパワハラ防止法措置義務の施行
職場のパワハラを防止するために、企業は雇用管理上の措置を講じなければなりません。
大企業は措置義務がすでに施行されていました。
2022年度(令和4年度)からは、中小企業もパワハラ防止措置を講じる義務が施行されます。
中小企業のパワハラ防止措置義務については、以前記事にしていますので、参考にしてくださいね。
女性活躍推進法の行動計画対象企業拡大
女性活躍推進法でこれまでは常時雇用する労働者が301人以上の企業が対象となっていた一般事業主行動計画の策定義務が、2022年度(令和4年度)4月から常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業に対しても拡大されます。
女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)(厚生労働省HP)
企業における女性の活躍を促進するための「一般事業主行動計画」を策定して、労働局へ届け出。
その後はその行動計画を社内や社外へ公表することが義務付けられます。
育児介護休業法の改正
育児・介護休業法の改正が一番の目玉かもしれません。
2022年度(令和4年度)は4月と10月の2段階で改正法が施行されます。
2022年(令和4年)4月スタート。
- 有期契約労働者の要件緩和(育児休業、介護休業)
- 制度の個別周知、取得意向確認の義務化
- 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
2022年(令和4年)10月スタート。
- 「出生時育休(産後パパ育休)」の創設
- 育児休業の分割取得
- 1歳以降の育休開始日の柔軟化
- 育児休業給付金の見直し
- 出生時育児休業給付金の創設
- 育児休業期間中の社会保険料免除の見直し
です。
4月施行については以前記事にしておりますので、参考にしてくださいね。
特に10月スタートの「出生時育休」については、男性労働者が子どもの出生後8週間までの間に最大4週間(28日間)育休を取得でき、しかも2回まで分割取得できるという制度です。
育休開始の申し出も、「2週間前までに」と短縮されています。
男性は「出生時育児休業」と「通常の育児休業」の2種類の育児休業を取得できることになり、男性労働者の育児参加の促進が期待されています。
育児休業期間中の社会保険料免除も改正されます。
現行では月末に育児休業を取得していると免除となっていましたが、10月改正後は「同一月内で合計14日以上」取得していれば免除となることも加わります。
一方で賞与については、1か月を超える育児休業を取得している場合に限り免除とする制度へ変更されます。
より合理的な社会保険料の免除の制度になっていきます。
雇用保険料率の改定
新型コロナウィルス感染症の猛威により、雇用調整助成金が2022年3月現在で5兆円支給されています。
助成金の原資は雇用保険料です。
その雇用保険料の積立金が枯渇しております。
そのため雇用保険料の料率が改定が予定されています。
「一般の事業」でいえば、2022年度(令和4年度)については、
- 4月~9月の雇用保険料率:1000分の9.5
- 10月~3月の雇用保険料率:1000分の13.5
と、なんと年度途中で変更になるんです。
給与計算は大丈夫だろうか?
と心配になります。
毎年6月に行われる労働保険の年度更新でも、2022年度(令和4年度)の概算保険料を計算して申告することになりますので、実務上は10月前から影響があるでしょう。
国民年金・厚生年金の改正
年金関係も4月と10月の2段階で改正が行われます。
まず4月スタート。
- 60歳代前半の在職老齢年金制度の見直し
- 在職定時改定の導入
- 繰り下げ受給の上限年齢を75歳に引き上げ
- 繰り上げ受給の1カ月あたりの減額率を0.5%から0.4%へ変更
続いて10月スタート。
- 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
- 強制適用となる5人以上の個人事業所の業種に「士業」が追加
です。
企業の人事労務担当者が注目すべきは、10月改正の「短時間労働者への社会保険の適用拡大」です。
社会保険適用拡大特設サイト(厚生労働省HP)
厚生労働省も特設サイトを作って本腰を入れています。
2022年(令和4年)10月から、従業員数101人~500人の企業で働くパート・アルバイトの従業員で一定の働き方に該当する従業員が新たに社会保険の適用対象となります。
これまで「扶養の範囲内で」という働き方をしていても、「社会保険加入対象」となる場合がありますので、企業の担当者は要チェックです。
あとは4月スタートの「60代前半の在職老齢年金の見直し」です。
現行「28万円」の支給停止基準額が「47万円」と拡大されます。
28万円の基準を意識して就労を抑えていた60代前半の労働者がいる場合、労働条件の変更の申し出があるかもしれません。
女性の場合は男性より厚生年金の支給開始年齢の引き上げが5年遅れていますので、これも頭に入れておきましょう。
士業事務所への社会保険適用拡大も記事にしていますので、参考にしてください。
まとめ
2022年度(令和4年度)の社会保険・労務関係の法改正
2022年4月からは
- 中小企業のパワハラ防止措置義務化
- 女性活躍推進法の一般事業主行動計画対象企業の拡大
- 育児・介護休業法の改正
- 雇用保険料の改定
- 国民年金・厚生年金の改正
がありました。
それも4月改正、10月改正と、2段階で実施されるものがありました。
改正して良くなることもあれば、雇用保険料の改定など残念な改正もありました。
毎年4月は新しい制度がスタートする季節です。
入退社が最も活発になる時期でもあります。
入退社手続きをしながら法改正情報を追いかけるのは大変です。
お困りの際は、人事労務の専門家、社会保険労務士へご相談ください。