こんにちは、沖縄県の社会保険労務士松本崇です。
今回は「遺族厚生年金の男女差是正」についてお話しします。
先日
「子どもがいない夫婦の遺族厚生年金における男女差をなくす方向で検討へ」(NHK)
というニュースが厚生労働省から発表され、SNSで話題となりました。
2025年度の年金制度改革の一環として是正が検討されています。
この記事では、遺族厚生年金の現状、改革の背景や見通しについて私が考えていることも含めて解説します。
遺族厚生年金の改正の方向性について、知りたい方は必見です。
Youtube動画も作成しておりますので、よかったらご覧ください。
遺族厚生年金の現状
まず、現行の遺族厚生年金がどのような仕組みになっているのかを確認しましょう。遺族厚生年金の受給対象者は、亡くなった方に生計を維持されていた次の優先順位の高い順に決まります。
- 子のある配偶者
- 子(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある場合)
- 子のない配偶者
- 父母
- 孫(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある場合)
- 祖父母
特に問題となるのは、子どものいない配偶者のケースです。
子のない30歳未満の妻は5年間のみ遺族厚生年金を受給できます。
一方、子どものいない夫の場合は55歳以上でなければ受給資格がなく、受給開始は60歳からとされています。
このような制限がなぜ存在するのでしょうか。
男女差が生まれる背景
現在の遺族厚生年金制度には、以下のような男女格差が存在します。
- 妻が受給する場合:子がいる場合や30歳以上の場合には支給されますが、子のいない30歳未満の妻は5年間のみの支給です。
- 夫が受給する場合:子のいない夫は55歳以上でなければ受給資格がなく、さらに受給開始は60歳からとなります。
この格差は、昭和時代の「夫は仕事、妻は家庭」という性別役割分担が反映されたものです。
残された遺族が妻であれば、家計を支えるために年金が必要とされ、受給がしやすくなっています。
一方、夫が残された場合は「収入があるだろう」という前提があり、受給資格が厳しく設定されています。
改革の背景と見直しの見通し
今回検討されている改革案では、60歳未満の子のいない夫婦について、男女を問わず5年間の期限付き遺族厚生年金とする見込みです。
現行の制度で受給している方に不利益が生じないよう、数十年かけて段階的に改革が行われる予定です。
想定されるのは、女性の「30歳未満は5年間の有期支給」という条件を、35歳未満、40歳未満、45歳未満といった形で徐々に引き上げていく方法です。
数十年かけて、20代から50代の子のいない遺族厚生年金は、5年間の有期年金に統一される見通しです。
詳細は、厚生労働省が公表している資料で確認できます。
まとめ
現時点での改革案では、60歳を境に有期か無期かが分かれる見通しですが、以下の2点について将来的な変更の可能性があるのではないか、と個人的に思っております。
- 60歳以上の基準の引き上げ:政府が70歳就労を推進していることから、60歳以上の無期給付の基準が段階的に引き上げられる可能性があるのではないか。
- 国民年金の第3号被保険者制度への影響:男女格差の是正が進むことで、サラリーマンの扶養に入っている配偶者の年金問題にもメスが入ることが考えらる。
共働き世帯が増加する中、配偶者が年金保険料を負担せずに将来の年金を受給する現行制度の見直しが議論される可能性があるのではないか。
現行の年金制度は、昭和時代の景気拡大期と人口増加期に構築されたもので、現代の少子高齢化社会には適していません。
今後、100年安心の年金制度を維持するためには、負担の公平化と年金給付の安定が求められます。
私たちの老後を考える上で、年金と就労を組み合わせたライフプランを検討することが重要です。
定期的なライフプランの見直しと知識のアップデートに努めることで、豊かで充実した老後を実現しましょう。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
沖縄県浦添市の社会保険労務士である松本崇が、遺族年金の改正の見通しについて解説しました。
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