沖縄県浦添市の特定社会保険労務士・特定行政書士・1級FP松本@officegsrです。
昨年「特定行政書士」の法定研修を受講し、考査に合格(修了)することができました。
特定行政書士って何ができるの?どうしたらなることができるの?
について、解説します。
特定行政書士を目指す人は必見です。
(この情報は令和4年5月現在の情報に基づいて記載しています)
特定行政書士について
特定行政書士とは、
「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成する」
業務を行うため特定の研修を修了した資格になります。
本来審査請求などの紛争性のある業務は弁護士が代理して行う業務となっておりましたが、「行政書士が作成した官公署に提出する書類」に「係る」「審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について」「代理することができる」
というものです。
そしてその業務を行うについては、
「日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。」
のです。
そうなんです。
なんでもかんでも不服申し立てを代理できるんじゃないんです。
「行政書士が作成した書類に関する不服申し立て」を代理できるのであって、行政書士が関与していない許認可等に係る審査請求などは代理できません。
そのため、代理受任できる範囲についてはかなり限定されてきます。
特定行政書士になるためには行政書士試験に合格した後、日本行政書士会連合会が実施する研修を受講して修了し、日本行政書士会連合会が実施する「考査」において基準に到達する必要があります。
特定行政書士法定研修
毎年4月1日から6月中旬までの間が、申し込み期間となります。
受講資格は「行政書士」であることです。
行政書士試験に合格しているだけではなくて、行政書士名簿に登録されている必要があります。
講義は日本行政書士連合会の中央研修所サイトで、ビデオ・オンデマンド・システムで行われています。
1時間×18コマのビデオ講義を受講します。
この講義は1回目は倍速にできませんので、時間をしっかり確保しないといけません。
ただ、ビデオ講義というのは早朝夜間に受講することができるので私にとっては大変ありがたいものでした。
受講期間も1カ月半程度と決まっておりますので、その期間内に講義をすべて受講しなければなりません。
申し込み方法は「FAX」のみ。
4月1日申し込み初日のFAXが大変混みあいます。
FAXでの申し込みが無事送信完了しますと、後日受講料入金方法に関するFAXが送信されてきます。
FAX番号持っていない方は送信・受診で利用するFAX番号を確保しておきましょう。
ちなみに私はインターネットFAXである「メッセージプラス」を活用しています。
ネットにつながればどこでも送信・受診確認できるので大変便利です。
受講料の入金方法は「ゆうちょ銀行」での払い込みです。
受講料払込期限までに払い込まないといけません。
そして気になる受講料は、
8万円(テキスト代含む)
です。
決して安くはありません( ;∀;)
8万円も払い込んで、講義が無事修了できなかったらもったいないことになります。
中央研修所サイトのビデオ講義は各コマ最後まで受講すると「修了証発行」済みに切り替えないといけません。
最後まで見たつもりでも最後の1秒まで再生されていなかったら修了証発行済みにならないので注意しましょう。
受講科目は
- 行政法総論(1時間)
- 行政手続制度概説(1時間)
- 行政手続法の論点(2時間)
- 行政不服審査制度概説(2時間)
- 行政不服審査法の論点(2時間)
- 行政事件訴訟法の論点(2時間)
- 要件事実・事実認定論(4時間)
- 特定行政書士の倫理(2時間)
- 総まとめ(2時間)
行政法、行政不服審査法、行政手続法、行政事件訴訟法は行政書士試験の科目にもなっているのでなじみがあります。
「要件事実・事実認定論」が難しいと感じるかもしれません。
これは実際の裁判で利用される、事実認定の法的思考を学ぶ講義となります。
要件事実、主要事実、弁論主義の第1テーゼ、第2テーゼ、第3テーゼなどなど。
「せり上がり」の理解に苦しみました( ;∀;)
特定行政書士考査について
特定行政書士法定研修を無事終了しますと、考査の受験票が送付されてきます。
考査は全国一斉に同時開催です。
令和4年は10月16日午後2時~午後4時となっています。
試験は30問択一式のマークシート方式。
合格基準はおおむね6割と言われています。
合格発表は11月中旬です。
合格発表は、行政書士会員サイト「連con」内で「法定研修の修了者」として受検番号が発表されます。
ここが難しい!特定行政書士法定研修
いままでいくつかの資格試験を受講してきて、特定行政書士研修が難しかった!と感じること。
それは
「過去問が公表されていない」
ということです。
そして解答も発表されません。
わかるのは考査に無事通ったかどうかということです。
そのため「過去問を5周回す」なんて資格試験の王道が通用しない!
あれこれ検索してみると、過去の受験者を頼って過去問を手に入れていく、あるいは考査の過去問の正解だけを有料で発表している行政書士の先生などもいます。
参考になるのは、岡田忠興先生の、
「特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題」(税務経理協会)
ではないでしょうか。
あと行政書士の中央研修所サイトの有料の講座や問題などです。
ひたすら条文を覚えて、模擬問題と中央研修所サイトの問題を解いてなんとか合格できました。
令和3年度の合格率は67.8%でした。
例年7割弱で推移しているようです。
中央研修所サイトに掲載される問題集を全問正解しちゃうと「完了」になっちゃうので、繰り返し解くためには1問必ず間違えるところがミソです。
特定行政書士法定研修再受講制度について
1年目の考査で研修修了に至らなかった場合、また2年目も受講料8万円が必要なのか?
安心してください。
法定研修には「再受講制度」があります。
法定研修は初回受講年度を含む3年間に限り再受講が可能です。
そして受講料の減免措置があります。
例えば、1年目残念ながら考査終了とならなかった場合、
2年目研修再受講(任意)+再受験する場合は4万円、考査のみ受験する場合は無料です。
そして2年目でも残念ながら考査到達基準未到達の場合、3年目の再受講は義務となり、2年目の受験4万円を払っている場合は受験無料、2年目無料で考査のみ受けている場合は再受講(義務)と受験料(4万円)、2年目考査も受講もしていない場合は、再受講(義務)と受験(4万円)となっています。
2年目以降の受講申し込みのときに、どのパターンで受講するか選択します。
まとめ
特定行政書士法定研修。
特定行政書士とは、
行政書士が作成した官公署に提出した書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申し立ての手続きを代理することができる
資格のことでした。
そして特定行政書士になるためには、日本行政書士会連合会の実施する法定研修を修了することが必要でした。
その特定行政書士法定研修は行政書士試験に合格しているだけではなく、行政書士名簿の登録されている必要があります。
特定行政書士法定研修の申し込みはFAXにて行い、その受講料は8万円でした。
研修は9科目、18時間をオンデマンドで受講します。
裁判での法的思考の基本となる「要件事実・事実認定論」が初学者には難しいです。
特定行政書士法定研修を修了するためには、考査で基準に到達する必要があります。
考査は例年10月中旬頃同日同時刻に全国一斉に開催されます。
特定行政書士法定研修の難しいところは、過去問が公表されていない、解答が公表されないことでした。
「特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題」や日本行政書士会連合会の中央研修所サイトなどの問題で演習を行う方法を紹介しました。
1年目に特定行政書士法定研修を終了できなくても、2年目3年目までの再受講制度があります。
合格率は例年7割弱なので、もし1年目で残念な結果になっても、2年目再受講、再受験でトライすることが可能です。
実際、特定行政書士は「行政書士が作成した書類に係る不服申し立て」しか代理できませんが、要件事実・事実認定論、許認可を通すための審査基準を満たすための法的枠組みの理解など、研修そのものはとても有益でした。
行政書士試験に合格して行政書士名簿に登録した際には、ぜひ特定行政書士にもチャレンジしてみてください。