こんにちは、社会保険労務士の松本@officegsrです。
今回は
「103万円の壁引き上げの裏にある注意点とは?」
について解説します。
先日行われた衆議院議員総選挙で、政権与党が大幅に議席を減らし、新しい政権の枠組みに注目が集まっています。
その中で、国民民主党が掲げた「103万円の壁を178万円に拡大する」という提案が話題となっています。
今後の政策議論に影響を与える可能性がでてきました。
今回の記事ではまず「103万円の壁」とは何かを説明し、103万円の壁を超えることが簡単には喜べない事情があることについて解説します。
103万円の壁の問題について知りたい方は必見です。
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所得税と「103万円の壁」について
103万円の壁は、所得税が発生する基準を指します。
所得税は1月から12月までの収入に課される税金で、給与所得者にとって重要なポイントです。
所得税を計算する際、収入から控除額を引いて課税所得を求めます。
これにより、税金の負担が軽減されます。
まず、すべての給与所得者には基礎控除として48万円が一律で収入から差し引かれます。
例えば、年間収入が100万円の場合、所得税は100万円から48万円を引いた52万円に対して課されることになります。
さらに、給与所得者には給与所得控除という制度があり、最低でも55万円を控除できます。この控除は給与所得者における経費の概念に相当し、所得税の対象となる金額を減らす役割を果たします。
この結果、年間の給与収入が103万円までは、基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせて差し引くことで、所得税がかからないという計算になります。
つまり、「103万円の壁」を超えた場合、初めて所得税が発生します。
これが給与所得者にとって「所得税がかからない」上限となり、多くの人が意識するラインとなっているのです。
「103万円の壁」を超えるときの注意点
103万円を超えると、所得税が発生します。
しかし、この壁は単に税金が発生するだけではなく、親の扶養控除から外れる基準にもなっています。
扶養控除の対象となる親族の所得の要件は「給与収入が103万円以下」というのが条件です。
この103万円は所得税の壁とは別の要件ですから、所得税の103万円の壁だけが引上げられても、この要件がそのままだと、家庭全体で見れば予想外の所得税増加を引き起こす可能性があります。
特に学生やアルバイトの方にとっては、このラインを意識することが多いでしょう。
扶養控除から外れることで、親の所得税負担が増えるため、家計全体への影響が生じることになります。
さらに、103万円を超えても控除後の課税所得が少額であれば、所得税そのものは比較的低く抑えられます。
これにより「収入が増えても手取りが大きく変わらない」いわゆる「手取りの増加が実感できない」という現象が起こることもあります。
よく年収の壁を議論する際には手取りの減少を補填するためのなんらかの助成金などの制度も推進されます。
この助成金により、より多くの人が働く時間を増やしやすくなるかもしれませんが、すでに壁を越えて働いている人には不公平でもあります。
所得税は、その他の控除もあるため、実際に所得税がそれほど発生せず、「手取りが大幅に増えた」と実感することは難しいかもしれません。
「103万円の壁」より手取りが増えるために注目すべき点
所得税だけでなく、手取り額を大きく左右するのは社会保険料です。
給与の約15%が社会保険料として控除されるため、この負担の方が所得税よりも大きな影響を及ぼします。
たとえば、年間収入が103万円を超えたことで所得税が発生したとしても、その影響は限定的です。
一方、社会保険料が適用されるライン(130万円や106万円)を超えると、給与からの控除額が一気に増えるため、実質的な手取りが大きく減少する可能性があります。
少子高齢化が進む中で、公的年金や医療保険の負担は増加の一途をたどっており、社会保険料の削減は簡単には実現しないでしょう。
そのため、「103万円の壁」を引き上げるだけではなく、総合的な対策が求められます。
所得税や社会保険料の制度改革は、将来の年金や医療保険の制度にも影響を与えるため、今後も注視していくことが重要です。
特に若年層や働く学生は、自分の収入がどの壁に該当するかを理解し、労働時間や収入を計画的に管理することが大切です。
まとめ
「103万円の壁」引き上げの裏にある注意点。
103万円の壁は所得税の発生基準であり、給与所得者にとって重要なポイントです。
所得税が発生するだけでなく、扶養控除から外れることによって家計全体に影響を及ぼすため、特に学生やアルバイトの方々が注意しています。
「103万円の壁」引上げと同時に、扶養控除の要件「給与収入103万円以下」についても、同時に引上げされることが望まれます。
今後の政策として所得税の「103万円の壁」上限を引き上げる提案もありますが、手取りを増やすことについて大きな要素は「社会保険料」です。
社会保険料は段階的に増えていく所得税と異なり、給与からの控除割合が約15%と大きいため、収入が増えた際の手取りへの影響が顕著です。
しかし、これからの社会では、少子高齢化に伴い負担の公平性や制度の持続可能性が求められます。
それゆえ社会保険料の削減は簡単には見込めないでしょう。
私は、社会保険の適用拡大、扶養に入って保険料負担のない第3号被保険者の問題などから進められていくのではないか、と予想しています。
年金や医療保険制度の在り方も含めて、今後の政策動向に関心を持ち、自分のライフプランを考えていくことが大切です。
個人が適切な計画を立てることで、将来に備え、豊かで安定した生活を築くことが可能になります。
本日も最後までご覧いただき ありがとうございました
沖縄県浦添市の社会保険労務士、行政書士、1級技能士である松本崇が、103万円の壁引上げの裏にある注意点について解説しました。
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