沖縄県浦添市の特定社会保険労務士、特定行政書士、1級FP松本@officegsrです。
令和4年は社会保険の適用事業所についていくつか改正があるのをご存じでしょうか。
今回はそのなかの一つ「5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所」について解説します。
従業員5人以上を雇用している士業の個人事業所は必見です。
(この記事は令和4年1月現在の法令に基づき記載しています)
士業の個人事務所の被用者保険の適用拡大について
これまで個人事業主の事業における被用者保険(健康保険および厚生年金保険)の適用について、現行制度では適用事業種が限られていました。
なんと社会保険のプロである社会保険労務士の個人事務所も従業員5人未満であれば社会保険の強制適用事業ではなかったんですね。
しかし、法律の改正により5人以上の従業員を雇用する士業の個人事務所についても、適用業種となりました。
その開始時期は、
令和4年10月1日
です。
適用業種となる士業の分野は以下のとおりです。
- 弁護士
- 公認会計士
- 公証人
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 司法書士
- 行政書士
- 海事代理士
- 税理士
- 弁理士
- 社会保険労務士
上記の士業事務所で、常時5人以上の従業員を雇用している事務所は健康保険、厚生年金保険が強制適用となります。
強制適用になると、正社員や正社員の4分の3以上の所定労働日数・時間で働くパート従業も被保険者となります。
ちなみに社会保険の加入対象となるのは「被用者=従業員」であり、いわゆる「所長=個人事業主」は、社会保険の加入義務の対象となりませんのでご注意ください。
(この点法人の代表取締役など役員は「法人に使用される」というイメージで、社会保険の加入義務があります)
士業の個人事務所の社会保険適用手続きについて
社会保険の適用拡大となる事業所は、令和4年10月がやって来ても自動的に社会保険に加入するわけではありません。
日本年金機構へ事業所の「新規適用届」と対象となる従業員の「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
また被保険者に被扶養者がいる場合には「被扶養者異動届」の提出も必要です。
<新規適用の手続き>日本年金機構HP
加入対象となる従業員はまず「正社員」です。
次に「正社員の4分の3以上の日数・時間で働くパート従業員」です。
たとえば週40時間労働の事業所で言えば、週30時間以上働いているパート従業員(1日6時間週5日)などが加入義務のあるパート従業員となります。
最近副業している方も多いと思いますが、ひとつの事業所で週30時間を超えるかどうかが判断の基準になるのでダブルワーカーのパート従業員が通算週30時間以上となっても、その事務所で30時間未満であれば加入義務はありません。
(ちなみに両方の事業所で週30時間働いているとか、一方では常勤役員で一方では週30時間のパート従業員などの場合は、どちらも社会保険加入対象となる場合がありそのときは「2か所の事業所で働いています」という届出(二以上事業所勤務届)の提出が必要になる場合があります)
社会保険の適用について考えておくべきこと
社会保険の適用で考えておくべきことは、なんと言っても毎月引き落とされる社会保険料が「事業主従業員の折半」ということです。
従業員の毎月の給与から社会保険料がまず引かれます。
そしてそれとほぼ同じ金額を事業主が負担することになります。
この場合、事業主負担分は所長先生が負担することになりますね。
従業員の毎月の給与総額(通勤手当込み)からいくらくらいの社会保険料になるのか、事業主の負担はどれくらいになるのか、シミュレーションしたほうがいいですね。
よく商工会などで個人事業主から社会保険の任意適用の相談を聞くことがあります。
みなさん社会保険料の事業主負担の概算を聞いて驚かれます。
しかし、社会保険に加入すると保険料の負担が大変でいいことないじゃないか!?と思う方もいるかもしれませんが、メリットもたくさんあります。
なんと言っても「うちの事業所は社保完備です」とアピールできて求人に有利になるからです。
従業員の方も社会保険料が天引きとなることで「手取りが減ったー」と残念に思う方もいるかもしれませんが、社会保険に加入することで「傷病手当金」や将来の厚生年金が増えるなど従業員の福利厚生という部分ではメリット大なんです。
国民健康保険や国民年金保険料を自身で負担していたのものが、事業主と折半することになりますので事業所で働く人にとって現在も将来も、万が一や老後に備えた就労環境になるんですよ。
まとめ
いかがでしたか?
社労士事務所以外の士業の先生方の事務所でも、
従業員が5人以上いる場合
には、社会保険の強制適用事業所になることがわかりました。
そのスタートは令和4年10月からです。
社会保険料は事業主と従業員で折半します。
そのため、事業所負担の金額を把握することはとても大切なことです。
月々の固定費として計上されていきますので。
社会保険の加入対象となるのは、正社員と正社員の4分の3以上の日数・時間で働くパート従業員です。
そして事業主は強制加入の対象ではありません。
10月になってあわてないためにも対象者の把握と事前の準備をしっかり行いましょう。