
こんにちは、沖縄の社労士、行政書士、1級FP技能士の松本@officegsrです。
「職員には有給休暇を取るように伝えているのですが、なかなか取得が進みません」
福祉・介護事業所の経営者や管理者から、このような相談を受けることがあります。
職員に声をかけても、有給休暇の取得がなかなか進まない。
その場合、職員本人の意識だけを問題にするのではなく、一度確認していただきたいことがあります。
それが、
「その職員が休んでも、事業所の業務は回るのか?」
ということです。
令和8年度の介護職員等処遇改善加算の「職場環境等要件」には、有給休暇の取得促進に関する具体的な取組が示されています。
今回は、その中でも⑫の
「有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている」
について、福祉・介護事業所では具体的に何をすればよいのかを考えてみましょう。
「有給を取りましょう」だけでは休めない

有給休暇の取得促進というと、
「職員に積極的に声をかける」
「有給休暇の取得率を確認する」
「希望休を出しやすくする」
といった取組をイメージする方が多いのではないでしょうか。
もちろん、こうした取組も大切です。
実際、職場環境等要件⑪では、有給休暇の具体的な取得目標を設定し、取得状況を定期的に確認したうえで、上司などから積極的に声をかける取組が示されています。
一方、⑫は少し視点が違います。
「有給を取りましょう」と促すのではなく、
「そもそも休める職場になっていますか?」
という視点です。
例えば、ある職員が、
「休みたいけど、私が休んだら利用者さんのことが分かる人がいない」
「請求業務をできるのが私しかいない」
「家族とのやり取りを全部自分が担当している」
という状態だったらどうでしょうか。
制度上は有給休暇を取得できても、実際には休みにくくなります。
そこで重要になるのが「属人化」の解消です。
①一人しかできない仕事を探す
最初にやっていただきたいのは、
「○○さんしかできない仕事」
を探すことです。
例えば、
- 介護報酬の請求業務
- 利用者や家族への連絡
- ケアに関する特定の業務
- 行政への届出や書類作成
- シフト作成
- 物品の発注
- 各種記録の管理
などです。
「担当者が決まっている」こと自体が悪いわけではありません。
問題なのは、
「担当者が休んだら、誰も分からない」
という状態です。
まずは事業所の業務を書き出して、
「この人が1週間休んでも大丈夫か?」
という視点で確認してみてください。
意外なところに属人化した仕事が見つかることがあります。
②情報をみんなで共有する
属人化を減らすために重要なのが、情報共有です。
特に福祉・介護の仕事では、利用者本人の状態だけでなく、家族とのやり取りやこれまでの支援経過など、さまざまな情報を扱います。
担当職員の頭の中だけに情報がある状態では、その職員が休んだときに他の職員が対応できません。
例えば、
「○○さんのご家族から昨日電話があったけど、内容は担当者しか知らない」
という状態では困ります。
記録システムや申し送り、共有ファイルなどを利用して、必要な情報を他の職員も確認できるようにしておきましょう。
ポイントは、
「情報共有しています」
で終わらせないことです。
「担当者が急に休んでも、別の職員が必要な情報を確認して対応できるか」
という視点で確認することが重要です。
③複数担当制を取り入れる
重要な業務を一人だけに任せないことも有効です。
例えば、メインの担当者とサブの担当者を決めておく方法があります。
普段はメイン担当者が中心になって業務を行います。
しかし、サブ担当者も業務内容や進捗を把握しておく。
こうしておけば、メイン担当者が有給休暇を取得した場合でも、サブ担当者が対応できます。
すべての業務を完全な複数担当制にする必要はありません。
まずは、
「この業務が止まると困る」
という重要な仕事から始めてみるとよいでしょう。
④業務の偏りを見直す
もう一つ確認していただきたいのが、業務量の偏りです。
例えば、
「仕事ができるから」
「経験が長いから」
という理由で、特定の職員に仕事が集中していないでしょうか。
頼みやすい職員に次々と仕事を任せていると、その人だけが忙しくなります。
結果として、
「他の職員は休めるのに、自分だけ休めない」
という状態になる可能性があります。
これでは有給休暇の取得促進とは逆方向です。
業務量を見える化し、
「誰が、どの仕事を、どのくらい担当しているのか」
を一度確認してみましょう。
特定の職員に業務が集中しているのであれば、他の職員への引継ぎや分担を検討します。
これは有給休暇の問題だけではありません。
業務負担の偏りによる不満や離職を防ぐという意味でも重要です。
⑤「休んでも回る仕組み」をつくる
最終的に目指したいのは、
「誰かが休んでも業務が回る事業所」
です。
そのためには、
- 業務手順書を作る
- 引継ぎ方法を決める
- 情報の保存場所を統一する
- 複数の職員が業務を経験する
- 担当者と副担当者を決める
などの仕組みづくりが考えられます。
例えば、
「請求担当者が休んだので、誰も請求方法が分かりません」
では困ります。
手順を簡単にまとめ、別の職員にも定期的に業務を経験してもらえば、担当者が休みやすくなります。
ここで大切なのは、担当者本人に引継ぎを丸投げしないことです。
属人化は、個人の問題というより、事業所の業務管理の問題として考える必要があります。
処遇改善加算のためだけに取り組まない

今回取り上げた内容は、介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件⑫への対応です。
厚生労働省のQ&Aでも、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」の具体的な取組として、情報共有や複数担当制などによって、業務の属人化や業務配分の偏りを解消することが示されています。
ただ、私はこの取組を「処遇改善加算の要件を満たすためだけのもの」と考えるのは、もったいないと思います。
属人化を解消すると、
- 有給休暇を取得しやすくなる
- 急な欠勤にも対応しやすくなる
- 新人へ業務を引き継ぎやすくなる
- 特定職員への負担集中を防げる
- 退職時の引継ぎがしやすくなる
といった効果も期待できます。
特に福祉・介護事業所では、人材不足が大きな経営課題になっています。
だからこそ、
「休まれると困るから休ませられない」
という職場ではなく、
「休んでも大丈夫な仕組みをつくる」
という発想への転換が必要です。
まとめ

いかがでしたか。
有給休暇の取得促進というと、「もっと有給を取ってください」と職員へ声をかけることを考えがちです。
しかし、それだけでは十分ではありません。
職員が休めない背景に、
「自分しかできない仕事がある」
「自分しか情報を持っていない」
「自分に仕事が集中している」
という問題がないか確認してみましょう。
介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件⑫では、情報共有や複数担当制などによって、業務の属人化や業務配分の偏りを解消する取組が示されています。
まずは事業所の中に、
「○○さんがいないと困る仕事」
がどれだけあるかを探してみてください。
そして、一つずつ情報共有、複数担当制、手順書の作成などを進めていく。
有給休暇を取りやすい職場をつくるポイントは、
「休んでいいですよ」と言うことではなく、
「安心して休んでも大丈夫な職場」をつくることです。
沖縄県浦添市の社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士である松本崇が、処遇改善加算職場環境等要件の「有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている」について解説しました

