
こんにちは、沖縄の社労士、行政書士、1級FP技能士の松本@officegsrです。
介護業界では、人材確保と職場定着が喫緊の課題です。
特に小規模介護事業所では、人手不足に加え、業務の属人化や負担の偏りが離職の原因となることも少なくありません。
こうした状況の中で注目されているのが、国や自治体が支援する「介護人材確保・職場環境改善等事業補助金」です。
この補助金を活用することで、現場の業務を整理し、課題を「見える化」する取組みが可能となります。
今回の記事では、補助金制度を活用しながら、介護職員の業務の洗い出しや棚卸しを行い、現場の業務負担や役割分担を明確化する方法を、社会保険労務士の視点からステップごとに解説します。
介護人材確保・職場環境改善等事業補助金の交付申請を行った事業所は必見です。
なぜ介護事業所で「業務の見える化」が必要なのか?

「現場の混乱は、業務の不透明さから始まる」と言っても過言ではありません。
特に小規模な介護事業所では、ベテラン職員が暗黙の了解で業務を抱え込み、新人やパート職員は手探りで業務を行っているケースが多く見られます。
業務の洗い出しと見える化には、次のような効果があります。
- 業務の偏りを是正し、負担を平準化できる
- 新人職員の教育やマニュアル作成に役立つ
- 介護助手導入などの業務再編にも活かせる
- 処遇改善加算の取得や定着支援加算の準備にもなる
つまり、見える化は「人材確保」と「職場環境改善」の両面に効果があるのです。
補助金制度の概要は下記ブログ記事をご覧ください。
補助金の対象となる要件として、
(2)職場環境改善等に向けて、以下のいずれかの取組を計画又は既に実施していること
① 介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の課題の見える化
② 業務改善活動の体制構築
③ 業務内容の明確化と職員間の適切な役割分担の取組
に取り組む必要があります。
今回は「介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の課題の見える化」の取り組みについて、5
つのステップで解説します。
今回の解説は一つの事例ですので、実際には専門家のアドバイスをふまえながら、自社にあったステップを経過することをおすすめします。
介護事業所の業務の洗い出し・棚卸しを行うステップ
【ステップ1】職員構成を把握する
まずは職員構成を整理します。
例えば、ベテラン職員1名、中堅職員2名、初心者3名、パート職員4名のように、職員の経験・技能に応じて、事業所の職員厚生を把握します。
この段階で、「誰が何を主に担っているか」「新人が手を出せていない業務は何か」を感覚的に把握しておきます。
【ステップ2】日常業務をリストアップする
次に、全職種に共通する業務と、職種別の業務をできるだけ細かく書き出します。
【例】
共通業務:出退勤記録、申し送り確認、清掃、送迎
介護職員:入浴介助、排泄介助、食事介助、記録記入
看護職員:バイタル測定、投薬管理、報告書作成
管理者:シフト作成、利用者対応、行政手続き など
GoogleスプレッドシートやExcelを使うと便利です。
【ステップ3】所要時間と負担感を可視化する
各業務について、「1日あたりの実施回数・時間」「心理的な負荷感(高・中・低)」を職員ごとに記入してもらいましょう。
この情報があると、「どの業務に誰がどれくらい時間を取られているか」が一目瞭然になります。
【ステップ4】属人化と重複業務を見直す
見える化したリストをもとに、次のような視点で分析します。
- 同じ業務を複数人が無駄にやっていないか?
- 一部の職員に偏っている業務はないか?
- パートや経験の浅い職員にも任せられる業務を分離できないか?
これにより、介護補助職員に任せるべき業務の整理や、マニュアル化の必要性が見えてきます。
【ステップ5】改善内容を文書化・共有する
改善内容を検討したら、結果を文書化し、職員間で共有しましょう。
紙ベースでも、ホワイトボードや業務で活用しているグループLINEなどでも構いません。
この文書化した業務整理の内容は、補助金の実績報告の資料としても活用できます。
先ほども述べたように、補助金の要件として職場環境の改善が要件となっています。
何も取り組みを行わないまま補助金を受給してしまえば、運営指導の際に指摘される可能性が大です。
そのほか補助金の対象としては、業務改善の外部支援費、研修費、ツール導入費用なども認められる場合があります。
介護事業所の業務見える化を成功させる3つのポイント
業務の見えるを成功させる3つのポイントは次のとおりです。
- 職員を巻き込む
「どうせやらされるだけ」とならないよう、業務整理の目的を丁寧に説明しましょう。 - 完璧を目指さず“まず一歩”から
全業務を網羅するのではなく、負担の大きい上位5項目の見直しから始めても効果的です。 - 外部支援をうまく使う
社会保険労務士や外部の専門家の力を借りることで、客観的かつ効率的に業務を整理できます。
補助金で専門家への外注費もカバー可能です。
介護事業所の業務見える化の先にある成果とは?

「やるべきこと」が明確になることで、新人の定着率が上がる
「やらなくていいこと」が見つかり、残業時間の削減につながる
「誰でもできる業務」が分離され、無資格者の導入(介護助手)がしやすくなる
「管理職の役割」が定義され、人事評価制度の導入にもつながる
つまり、業務の見える化は、職場全体の運営効率と人材の定着に直結する投資なのです。
まとめ

介護人材確保・職場環境改善等事業補助金を活用した「業務の見える化」いかがでしたか。
せっかく補助金を申請したのであれば、補助金を活用して、小さな一歩から始めましょう。
介護人材の確保と職場環境の改善は、一朝一夕には進みません。
ですが、「まず業務を見える化する」ことから始めれば、現場の空気は確実に変わります。
そして、国や自治体の補助金を活用すれば、限られたリソースでも効果的に取り組むことが可能です。
「職員が何となく忙しそう」「本当の課題が見えてこない」と感じている経営者・労務担当者の方へ。
今こそ、業務の見える化に着手するタイミングではないでしょうか。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
沖縄県浦添市の社会保険労務士、行政書士、1級技能士である松本崇が、介護人材確保・職場環境改善等事業補助金について解説しました。
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