こんにちは、FPで社会保険労務士の松本です。
今回は「103万円の壁」について解説します。
最近の衆議院議員総選挙では、政権与党が大幅に議席を減らし、新しい政権の枠組みに注目が集まっています。
その中で、国民民主党が掲げた「103万円の壁を178万円に拡大する」という提案が話題となり、今後の政策議論に影響を与えるかもしれません。
では、「103万円の壁」とは何かをご説明します。
これ以外にも「130万円の壁」や「106万円の壁」という社会保険に関するラインがありますが、今回取り上げるのは所得税に関する壁です。
Youtube動画も作成しますので、よかったらご覧ください。
※今回の記事は2024年10月現在の法令に基づき執筆しています。
所得税と「103万円の壁」
103万円の壁は、所得税が発生する基準を指します。
所得税は1月から12月までの収入に課される税金で、給与所得者にとって重要なポイントです。
所得税を計算する際、収入から控除額を引いて課税所得を求めます。これにより、税金の負担が軽減されます。
まず、すべての給与所得者には基礎控除として48万円が一律で収入から差し引かれます。
例えば、年間収入が100万円の場合、所得税は100万円から48万円を引いた52万円に対して課されることになります。
さらに、給与所得者には給与所得控除という制度があり、最低でも55万円を控除できます。
この控除は給与所得者における経費の概念に相当し、所得税の対象となる金額を減らす役割を果たします。
この結果、年間の給与収入が103万円までは、基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせて差し引くことで、所得税がかからないという計算になります。
つまり、「103万円の壁」を超えた場合、初めて所得税が発生します。
これが給与所得者にとって「所得税がかからない」上限となり、多くの人が意識するラインとなっているのです。
「103万円の壁」を超える影響
103万円を超えると、所得税が発生します。
しかし、この壁は単に税金が発生するだけではなく、親の扶養控除から外れる基準にもなっています。
特に学生やアルバイトの方にとっては、このラインを意識することが多いでしょう。
扶養控除から外れることで、親の所得税負担が増えるため、家計全体への影響が生じることになります。
さらに、103万円を超えても控除後の課税所得が少額であれば、所得税そのものは比較的低く抑えられます。
これにより、収入が増えても手取りが大きく変わらない、いわゆる「手取りの増加が実感できない」という現象が起こることもあります。
この103万円の壁の上限を引き上げることで、所得税を発生させずに手取りを増やすことができるようにする政策が実現できるか報道されています。
この改革により、より多くの人が働く時間を増やしやすくなる一方で、制度の維持には財政的な課題もあります。
所得税では、年収が低いほど実際に発生する税額はそれほど大きくはないため、「手取りが大幅に増えた」と実感することは難しいかもしれません。
手取りを増やすために注目すべき点
所得税だけでなく、手取り額を大きく左右するのは社会保険料です。
給与の約15%が社会保険料として控除されるため、一般的な給与所得者であれば、この負担の方が所得税よりも大きな影響を及ぼします。
たとえば、年間収入が103万円を超えたことで所得税が発生したとしても、その影響は限定的です。
一方、社会保険料が適用されるライン(130万円や106万円)を超えると、給与からの控除額が一気に増えるため、実質的な手取りが大きく減少する可能性があります。
(健康保険の扶養に入らずに国民健康保険料を自分で納めている人、国民年金保険料を自分で納めている人は、まだ所得税減の方が実感しやすいかもしれません。ただしトータルで考える必要があります)
少子高齢化が進む中で、公的年金や医療保険の負担は増加の一途をたどっており、社会保険料の削減は簡単には実現しないでしょう。
そのため、「103万円の壁」を引き上げるだけではなく、総合的な対策が求められます。
所得税や社会保険料の制度改革は、将来の年金や医療保険の制度にも影響を与えるため、今後も注視していくことが重要です。
まとめ
「103万円の壁」は所得税の発生基準であり、給与所得者にとって重要なポイントです。
所得税が発生するだけでなく、扶養控除から外れることによって家計全体に影響を及ぼすため、特に学生やアルバイトの方々が注意しています。
政府の政策として上限を引き上げる提案もありますが、手取りを増やすための大きな要素は社会保険料です。
社会保険料は所得税と異なり、給与からの控除割合が大きいため、収入が増えた際の手取りへの影響が顕著です。
これからの社会では、少子高齢化に伴い負担の公平性や制度の持続可能性が求められます。
年金や医療保険制度の在り方も含めて、今後の政策動向に関心を持ち、自分のライフプランを考えていくことが大切です。
個人が適切な計画を立てることで、将来に備え、豊かで安定した生活を築くことが可能になります。
私自身は、壁を意識せずに働ける分は働いた方が長い老後生活を考えるとプラスになるのではないか、と考えています。
本日も最後までご覧いただき ありがとうございました。
沖縄県浦添市の社会保険労務士、行政書士、1級技能士である松本崇が、年金制度改革の方向性について解説しました。
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