こんにちは、社労士の松本@officegsrです。
今回のテーマは「106万円の壁撤廃」と、社会保険適用のさらなる拡大についてです。
これまで社会保険加入をめぐる議論で「106万円の壁」と「130万円の壁」が話題となってきました。
簡単に説明すると、「130万円の壁」は扶養から外れる基準、「106万円の壁」は社会保険に加入する基準です。
しかし、2024年12月10日におこなわれた社会保障審議会年金部会で、厚生労働省が示した社会保険適用拡大方針が了承されました。
2026年10月以降、まず年収要件である「106万円の壁」が撤廃され、2027年10月には企業規模要件も撤廃される見通しです。
この動きは、短時間労働者を含めた多くの方々に影響を及ぼす可能性があります。
今回の記事では、この変更の背景、今後の流れ、そしてその影響について解説します。
働き方や収入に関する疑問を解消し、今後の動きに備えるためにぜひ最後までご覧ください。
Youtube動画も作成していますので、良かったらこちらもご覧ください。
まずは社会保険の適用の原則について
現在、社会保険の原則的な加入要件は、法人や従業員5人以上の個人事業を対象とする「適用事業所」で働く労働者に適用されます。
フルタイムで働く正社員や契約社員は、基本的に社会保険に加入する義務があります。
一方、パートタイム労働者は、フルタイム労働者の4分の3以上の勤務時間および日数、一般的に所定労働時間が週40時間の事業所であれば、その4分の3以上つまり週30時間以上働いている従業員が社会保険加入の対象となってきます。
これに加え、一定規模以上の企業、これを「特定適用事業所」と言いますが、この特定適用事業所で働く短時間労働者で、
- 週の所定労働時間が週20時間以上
- 月額給与が8万8千円以上
- 昼間の学生ではない
場合には社会保険に加入することが求められてきました。
この特定適用事業所の基準は、「従業員501人以上」から始まり、101人以上に引き下げられ、2024年には「従業員51人以上」にまで引き下げられました。
そして今回示された厚生宇労働省の社会保険適用拡大案が社会保障審議会の部会で了承されたため、2026年には年収106万円の要件の撤廃が、2027年10月には企業の人数規模要件も撤廃される見通しとなりました。
この変更により、企業規模に関係なく、週20時間以上働くすべての労働者が社会保険に加入することになる見込みです。
社会保険適用拡大の考え方と今後の見通し
なぜこのような方針が進められているのか
私は、最低賃金の引き上げが大きな要因である、と考えています。
現在、最低賃金の全国平均は時給1,055円です。
近年の引上げペースで進むと、2026年には全国的に時給1,000円を超える見込みです。
そして、週20時間の労働というのは月に換算するとおおよそ月87時間となります。
最低賃金が1,000円を超えて働く水準では、月87時間で8万8千円を超えてくるため、週20時間以上働く人は自然と年収106万円を超えてくると考えられます。
(1,012円×87時間でおおよそ8万8千円となります)
また、企業負担を軽減するため、106万円の壁近辺の従業員に対して企業が多めに社会保険料を負担する特例措置も提案されています。
(これはどこまで実効性があるか疑問です)
この改正により、短時間労働者が社会保険に加入する機会が広がり、老後の年金額が増えるなどのメリットが期待されます。
また、病気やケガで働けなくなった際に受けられる傷病手当金や出産手当金など、健康保険の給付も充実します。
しかし一方で、従業員と企業の双方にとって負担が増えることも否めません。
特に中小企業では、新たな負担に対応するための経営資源が限られている場合が多く、厚生労働省が実効性のある支援策を講じることが求められます。
また、衆議院選挙で与党が過半数割れしたことにより、この方針が国会でどのように議論されるかも注目されます。
議論の結果、施行時期や具体的な要件が変更される可能性もあります。
まとめ
今回の「106万円の壁撤廃」と「企業規模要件の廃止」は、短時間労働者の社会保険加入を推進し、制度の公平性を高める大きな一歩となります。
しかし、この変更には労働者と企業双方の負担増という課題も伴います。
最低賃金の上昇や社会保険適用拡大が進む中、各企業や労働者がどのように対応するかが重要です。
政府の方針に関する議論はまだ続きますが、今後の動きを注視し、自身の働き方や企業の対応策を考えていくことが必要です。
疑問点がある場合は、専門家や公的機関に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
本記事が、社会保険の改正について理解を深める一助となれば幸いです。
最新の情報をチェックし、より安心して働ける環境を整えましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
沖縄県浦添市の社会保険労務士、行政書士、1級技能士である松本崇が、社会保障審議会年金部会で了承された106万円の壁撤廃の方針について解説しました。
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