こんにちは、沖縄の社労士松本@officegsrです。
今回は、
大改正!令和6年度介護職員処遇改善の一本化
について、解説します。
介護処遇改善加算制度の概要について知りたい方は必見です。
厚生労働省が示す「全体説明資料」をもとに解説していきます。
介護職員の処遇改善とは
介護職員の処遇改善加算は平成21年から始まった「介護職員処遇改善交付金」による処遇改善の流れを受け、2012年から「介護職員処遇改善加算」としてスタートしました。
現在でもベースアップ加算等が最初は「介護職員処遇改善支援補助金」なんて名前で始まりましたね。
介護職員の処遇改善加算としてスタートした処遇改善加算制度ですが、上記のように現在では
- 処遇改善加算
- 特定処遇改善加算
- ベースアップ等支援加算
と3つの加算制度が並行しており、それぞれ支給要件が異なるものですから、非常に複雑な制度になっています(以上「旧処遇改善加算制度」と言います)
事業所も各加算の額を個別に管理して、要件にあうように職員の給与を改定する必要があり、さらにそれぞれの要件にそった実績の報告があるものですから、それはそれは大変な作業が毎年度ありました。
特に、年度初めの処遇改善計画の届出が遅れしまうと加算の支払いも遅れますし、これまでの制度の紆余曲折もあって様式も年度ごとに異なっているなど、事務負担は相当なものでした。
これらの事業所の負担軽減と今後のさらなる介護職員の処遇改善を進めるため、令和6年度に処遇改善加算制度が一本化(以降「新処遇改善加算制度」と言います)されることが決まりました。
具体的には令和7年度から完全実施となりますが、令和6年度は移行経過措置期間として「6月」から実施されます。
「やったやった、一本化して簡単になった」
と喜ぶのは早計で。
よく考えると、令和6年度については、4月と5月は旧処遇改善加算制度、6月以降は新処遇改善加算制度となると、実績報告も4,5月分と6月ー3月分に分かれるような感じになりますね。
経過措置とはいえ、もうしばらく事務負担は続きそうです。
新たな処遇改善加算制度を算定するためには
令和6年度6月から始まる新処遇改善加算制度を算定するためには、これまでの要件とはまた違った要件を満たすなど、要対応事項がでてきています。
キャリパス要件
旧処遇改善加算制度では、キャリアパス要件ⅠからⅢのなかからその取り組み状況に応じて処遇改善加算ⅠからⅢを選択しました。
一本化される新処遇改善加算制度ではキャリパス要件がⅠからⅤまでと、2つのキャリアパス要件が増えることになります。
そしてこれら5つのキャリアパス要件をどれくらい満たすかで、新処遇改善加算ⅠからⅣのどれに該当するか見極めることとなります。
ちょっとややこしいのですが、新処遇改善加算はⅠからⅣの4段階となります。
その加算を算定するためのキャリアパス要件がⅠからⅤの5つあることになります。
ローマ数字はⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳは同じでもその示す意味は加算の段階とキャリパス要件ではまったく異なることに注意してください。
月額賃金改善要件
旧処遇改善加算制度では、基本給の増加、毎月の手当に加えて「賞与」として多めに支給することも可能でした(ほぼ賞与でだすところもあった)。
それがベースアップ等支援加算から「3分の2以上を基本給または毎月決まった手当で支払うこと」という毎月要件の縛りがでてきました。
- 新処遇改善加算制度では新加算Ⅳの2分の1以上を基本給または毎月支払われる手当で改善すること。
- 現行のベースアップ等支援加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給の改善に充てること。
という2つの月額賃金改善要件が加わります。
職場環境要件
職場環境要件もかなり変わります。
旧処遇改善加算制度では、6つの区分から1つ以上、特定処遇改善加算では各区分ごとにそれぞれ1つ以上取り組む必要がありました。
それが新処遇改善加算制度では、新加算ⅢとⅣでは区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)、上位加算のⅠとⅡでは区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上うち必須項目あり)と、取り組み要件が増えてかつ必須項目もできます。
特に「生産性向上要件」への取り組みが必須となり、これまで以上に業務フローの見直しなど改善取り組みが必要となります。
職場環境要件は「やっています」とチェックをつけて、実際には取り組みができていない事業所も多いと思います。
実地指導、とりわけ国の会計検査の検査対象となると、取り組んでいる要件についてすべて文書で提出するよう指示されます。
検査する側としては「やっているんでしょ、なら根拠となる文書(議事録等)ありますよね」としかなりませんが、毎年チェックだけつけて実際に取り組み出来ていない事業所においては、虚偽の実績報告と判断される恐れがあります。
職場環境要件は実際に取り組めるものとチェックする、そして取り組んだものは書面として残しておく、は必須です。
まとめ
令和6年度介護職員の処遇改善加算一本化
一本化に合わせて様式も簡素化されます。
簡素化されて提出書類も減る半面、事業所に備えておくべき書類は実地指導や行政の提出依頼に応じて提出することになります。
そのときに「書類がない!」となると、処遇改善加算を適正に行っていたか厳しくチェックされることになってしまいます。
個人的には、今回の一本化により、各事業所において制度の趣旨にそって適切に処遇の改善に取り組んでいる、職場環境要件を整えているかどうか、を見られるようになるのではないか、と感じています。
これまで「計画書と実績報告書を出すだけで終わり」としていた事業所は、処遇改善一本化を契機に、適切に処遇改善環境の整備に取り組む良い機会になります。
何年も前にキャリパスを定めたままになっていませんか?
手当の種類が増えたのに、賃金規程も見直さずそのままになっていませんか?
実行されていない人事評価制度が机の中に眠っていませんか?
困ったときは、人事労務管理のプロである社会保険労務士にご相談ください。
本日も最後までご覧いただき ありがとうございました